お役立ち情報
1. 海外企業との取引で注意すべき点
2. 海外企業の信用調査がより重要となっている背景
3. 海外企業の信用調査を行う方法
輸入品の仕入れや原材料調達、製造委託、海外市場への輸出販売など、現代の海外取引は手続きや物流などの面でもかなり整備されており、敷居はそれほど高くないと言えます。
しかし、海外送金の手続きの煩雑さや長いリードタイム、長距離物流での商品の受渡しなど、取引相手とのコミュニケーションや協力体制がないとそう簡単にうまくいくものではありません。文化や慣習の違いはもちろんですが、一番大切なのは、海外取引相手との信頼関係が構築できるかという点です。
1. 海外企業との取引で注意すべき点
海外取引を行う際に注意しなければならない点としては、一般的にも広く認識されている通り、以下のような点があります。
・ 売掛金の回収(支払い不能、消息不明による回収不能など)
・ 先払い条件の付く仕入れ(支払い後に消息不明、商品が届かないなど)
・ 品質面(偽造品、粗悪品などによる商品ロス)
・ 詐欺などの犯罪
・ その他、模造品を作られたり、ブランド果実を栽培されたりする恐れにも注意が必要です。(知的財産権の侵害など)
国内取引においても注意することではありますが、法律や風習の違いなどもあり、海外取引ではよりトラブルが発生する可能性も高く、万一、トラブルが発生した場合は国内取引と比較にならないほど対応に苦慮することは想像に難くないと思います。
これらを踏まえ、海外取引の際に注意しなければならない基本事項としては、以下のような内容があります。
・ 契約内容や条件の入念な確認
口頭での約束などは当てにならないことも多々あります。また、日本では慣習となっていることも通用しないことがあります。契約書に記載された内容や条件以外は保証されないと考え、入念に確認をして契約を交わす必要があります。また、問題発生時にどちらの国の法律で解決するかという点も盛り込む必要があります。国によっては違法とならない事柄などもありますので、万一、訴訟となった場合に備え、法律や手続きについても知識を持っておく方がよいです。
・ 入金支払い
入金支払いの期日などは明確にしておかないと、トラブルになる恐れがあります。また、納品、検収などの捉え方が異なる場合もありえますので、取引する国の文化や慣習などについての知識を持って対応することが望まれます。
しかし、こういった注意を払い慎重に取引を進めても、そもそも取引相手自体に信用がないとどうしようもありません。そういったリスクを避けるために必要となるのが信用調査です。信用調査を行い、与信管理を行い、安心して円滑な取引を行えるようにすることが、海外取引を成功させる上で重要なポイントとなります。
2. 海外企業の信用調査がより重要となっている背景
大手企業だけでなく、中小企業も含め、海外取引を自社で独自に行う機会が増えていますが、取引の増加だけでなく、取り巻く環境の変化などにより、海外企業の信用調査の必要性が高くなっています。
① オンライン商談の普及
海外取引では、対面で対話を行う機会がそもそも少ないことが多いのですが、オンラインでのやり取りが一般化し、他社との競争がある中、スピードの面でもオンラインで済ませる方が有利であることもあり、対面で対話する機会を全く持たずに商談を成立させることもよくあります。
対話する機会自体は増加していると言えるのですが、対面で話すのとオンラインで話すのとでは、相手の人柄や誠実さを感じ取れるかどうかという点においては大きな差があり、信用調査による裏付けが求められることとなっています。
② 日本企業の取引条件の変化
日本企業は信用があり、技術面なども優れていたため、これまでは比較的安全性の高い条件(前金での取引や信用状決済など)をつけることもできたのですが、中国や韓国、台湾などをはじめ、価格面でも技術面でも急伸している国が増え、現在は日本企業だからといって有利な条件で商談を進められるという状況ではなくなってきています。
そのため、掛け売りや先払い仕入れなど、リスクを負う取引が必要となる機会も増えており、これまで以上に慎重に取引相手を見定める必要が出てきています。
③ インターネット取引の一般化
かつては、海外現地法人を構え、現地での取引を行ったり、コネクションのある企業や商社経由で海外取引を行ったりすることも多かったのですが、インターネット取引が一般化したことで現地企業との直接取引が大幅に増加しました。
市場競争で生き残るためにも、間接コストを省き、スピード感のある取引が行える直接取引は避けて通れないため、自社でリスクを負って取引を行う必要があり、海外取引先の信用調査の需要も増加することとなっています。
3. 海外企業の信用調査を行う方法
海外にも調査会社は多数存在し、企業調査を依頼することも可能ですが、評価基準や内容は国によっても異なります。また報告書の言語も基本的に現地のものとなります。そのため、依頼する場合は調査結果を正しく判断する知識も必要となってきます。また、依頼する調査会社自体の信用という問題もあります。
・ 自社で行う調査
過去に取引がある場合は、過去の実績を確認することで判断材料となります。ただ、過去の取引から月日が経っている場合は、企業体質の変動もあることから、再度信用調査を行う方がよいです。
また、自社以外の日本企業との取引実績がある場合、その取引について齟齬(そご)が無かったかの確認を行うことや、相互の取引実績のエビデンスを開示しあうことで理解を進めたり、現地に赴き直接会って確認したりする方法も有効です。
その他、インターネット等で当該会社のホームページの有無、登記や株式動向、ニュース記事などを調べることができます。専門の部署がある場合などは、こういった外部情報の調査で比較的精度の高い情報収集も可能ですが、一般社員の調査では、表面的な情報収集になりがちなので注意が必要です。また、中小企業などではホームページがないことや公開されている情報がほとんどないこともありますので、そういった際は入念に調査を行い、より慎重に判断する必要があります。
・ 現地の調査会社に依頼
海外調査会社に直接依頼する場合は、まず信頼できる調査会社に依頼できる体制であることが必要です。また、報告書の言語や結果報告の内容を正しく理解し、判断できる知識も必要です。
・ 国内の調査会社に依頼
海外企業情報のデータベースを持ち、海外企業調査実績のある調査会社や、海外のネットワークを持っている調査会社であれば、調査を依頼することが可能です。また、調査結果も日本向けに調整してくれたり、調査内容を説明してくれたりするサービスもあります。
自社での調査や同業他社に聞くなどした結果で判断できない場合、専門の部署がある場合などを除き、国内の調査会社に依頼するのがよいと考えられます。海外取引においては、調査を外部に依頼する、しないに関わらず、信用調査を行うことは必須と言え、事前に調査しておくことで商談を有利に進められることなどもあります。
また、企業の信用は日々変動があるため、期間が空いて再度取引する場合などは改めて調査することは元より、継続的に取引を行う場合も定期的に調査を行い、情報をアップデートすることが大切です。
次回は海外取引におけるリスクマネジメントについての記事をお届けしたいと思います。
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