経営者に求められる倒産リスク対策とは?
第3回 外部要因のリスク

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1. 外部要因リスクとは?
2. 外部要因リスクの対策
3. 外部要因リスクの認識と事前策の観点
4. 情報関連の外部要因リスク対策

前回は経営リスクの中でも内部要因によるリスクについて掲載しましたが、今回は外部要因のリスクについて掘り下げたいと思います。外部要因では、今後の変化やリスクとなりえる事象について検討し、発生してしまった際に適切に対応できるよう備えておくことがポイントとなります。
外部要因の課題としては、適切な対応として何を優先し準備をするのかということや、現時点で問題が発生していないことから、後回しになりがちな点などが挙げられます。

参照)経営者に求められる倒産リスク対策とは? 第2回 内部要因のリスク

1. 外部要因リスクとは?

外部要因リスクの代表的なものは、地震などの自然災害や経済問題、政治問題による環境変化です。こういったマクロ的な外部要因に加え、自社を取り巻くミクロ的な外部要因があり、取引先の倒産などによる取引停止(一時的なものも含む)が代表的なものとなります。

マクロ的外部要因リスク

・ 地震や台風などの自然災害、感染症拡大などによる環境の変化
・ 金融危機や原油高騰などの経済問題
・ 戦争やテロ、政権交代などの政治問題
・ 法規制の改正による企業運営の変化
など

ミクロ的外部要因リスク

・ 取引先の倒産や廃業、サプライチェーンの繋がりが途絶える
・ 外部からの不正アクセスなどのサイバー攻撃
・ 風評被害およびSNS等での誤情報拡散などによる被害
など

自社で発生を抑制することが難しい外部要因によるリスクは多数存在し、特にミクロ的外部要因においては、業界の慣習や地域性の強いものなど、各企業それぞれの環境によってリスクとして捉えておかないといけないものもあります。

2. 外部要因リスクの対策

外部要因のリスク対策としては、発生した際の損害の大きさや発生率を加味し、優先順位をつけ、回避、低減、転嫁、受容のリスク対策の方針を設定していく流れとなります。外部要因では主に発生した場合を想定して備える対策となりますが、その対策として有効とされているのがBCP策定です。
阪神淡路大震災や東日本大震災の教訓などから、中小企業においてもBCP策定が推奨されており、中小企業庁が指針やガイドブックの公開、セミナーの開催などを行っており、中小企業のBCP策定率向上に取り組んでいます。

BCP策定

BCPとは事業継続計画(Business Continuity Plan)の略称で、自然災害に代表されるような不測の事態が発生しても重要な業務を中断させない対策や、万が一、中断しても可能な限り短期間で復旧させるための方針や体制、手順などを策定し備える計画のことです。
過去記事でBCPを掘り下げていますので、詳しくは以下をご参照ください。

参照)企業のBCP対策 第2回 BCP対策の手順

リスク対策の方針について

回避:発生自体を防ぐ対策を行います。
業績不振な取引先との取引をやめるなどが該当しますが、自然災害や経済問題、サイバー攻撃など、外部要因においては自社で発生自体を防ぐことが困難なものが多いです。

低減:被害を減少または発生する確率を低くする施策を行います
地震に強い土地に工場建設、耐震設備導入、セキュリティ対策など被害の発生を抑えるための施策を行います。

転嫁:有事が発生した際に他で代替できるようにする対策です。
損害保険に加入し損害負担を補う、複数の取引先と予め取引できる体制を整えておく、バックアップサーバーを用意しておくなど。

受容:リスクと認識していても対策は行わないことです。
発生率や影響を検討した結果、時間や予算を割く対策は行わなくてもよいと判断する場合など。

外部要因は予測が困難ではありますが、過去の教訓を生かし、対策を行うことで未来が大きく変わる可能性があります。こういった改善の積み重ねは日々行われており、振り返ると対策することが当たり前になっていることも多々あります。

3. 外部要因リスクの認識と事前策の観点

リスク対策を行うには、まずリスクを認識する必要があります。自然災害などのマクロ的外部要因は多くの企業で共通する点も多く、例えば、先日発生したLAの山火事から得られた教訓は、多くの企業で活かすことができます。こういった過去の事例から得られた教訓は、BCP策定手順等でも認識することができます。

これに対し、ミクロ的外部要因はそれぞれの企業を取り巻く環境により異なるため、自社のリスク要因を注意深く探して把握する必要があります。把握するためには、正確な情報を得る必要があり、得た情報から対策を検討できる体制が必要となります。

これらの外部要因を認識した上で、発生に備える事前策としては以下のような観点で検討します。

・ ハード面:建物、設備の立地条件や耐性、代替設備など
・ ソフト面:避難計画、従業員教育など
・ 資源確保:取引先や流通網の代替等
・ その他:人材、資金、通信手段、インフラ、情報資産などの確保

リスクの認識においては内部要因と外部要因それぞれを把握する必要がありますが、どちらにも関連するものや共通の体制等が必要となるものも多くあるため、リスクマネジメントとして全体のリスク管理を行い、その中で内部や外部それぞれのリスクを検討することで効率よく効果的な対策を行うことができます。

4. 情報関連の外部要因リスク対策

近年は特に情報関連においてのリスク対策の重要性が高くなっており、サイバー攻撃や外部からの侵入・攻撃による情報漏えい等の対策の他に、SNS等風評リスクなども考慮しておく必要があります。

インターネット上の口コミ対策

外部の過度な反応、噂や誤情報を含め、誹謗情報等が拡散されてしまった場合を外部要因リスクとして捉え、冷静に適切な対処が素早く行えるよう体制を備えておくことが大切です。

情報を扱う能力の育成

情報収集力を強化することで、早い段階でリスクを察知し早期に対策を実施することや、情報を用いて最適な対策を導き出すなど、損害の縮小化に繋がります。情報を取得しても対処が適切でなければ、逆効果となることもあるため、情報の収集だけでなく情報を扱う力の育成が重要となります。

 

今回は、外部要因のリスクについて記載させていただきました。前回の内部要因のリスクは対策を怠ると直接的に経営危機に繋がる可能性があるのに対し、外部要因のリスクは発生した際に初めて影響を受けることから、優先順位が低くなりがちですが、影響の大きさや建て直しの時間、労力においては大きいことも多く、対策を行っている企業とそうでない企業で大きな差が生まれ、いち早く対応できた企業がその後に大きく発展する可能性もあります。
そういった意味では、外部の変化の可能性を検討し対策を行う外部要因のリスク対策は、企業成長戦略としての側面もあると言えます。

株式会社TMRでは、リスクマネジメント体制の構築支援を行っています。組織体制の最適化支援や内部通報制度、従業員研修による意識改革など、独自のノウハウと倒産予知情報「企業特調・デイリーWATCH」や連鎖倒産防止情報「債権者速報」の発刊や弁護士事務所からの多岐にわたる問題解決で得た豊富な実績を元に効果的な支援を行っています。