お役立ち情報
1.2020年の倒産動向
2.業種別・要因別の倒産動向とリスク管理の重要性
3.老舗企業に目立つ不況型倒産の影響
4.急速に高まる調査専門会社を活用した企業与信調査の必要性
1.2020年の倒産動向
新型コロナウイルス感染拡大による企業経営へのダメージが強く懸念されるなか、2020年中の倒産件数は約8,000件で、2000年以降で2番目の低い水準にとどまりました。また負債総額は1兆2000億円弱と最小だった前年を下回り、2000年以降で最小となりました。
政府の支援策が、総じて多くの企業の資金繰りを支え、倒産の歯止めとして機能した結果と考えられます。金融機関が実質無利子・無担保の新型コロナ対応融資を実施、2020年12月時点の金融機関の貸出残高は前年と比較して約6パーセント、金額は30兆円以上増加しました(日本銀行調べ)。持続化給付金は2021年初めまでに約400万件実行、5兆円以上(経済産業省調べ)支給されるに至りました。
2.業種別・要因別の倒産動向とリスク管理の重要性
業種別の倒産動向をみると建設業や卸売業の倒産件数が過去最少であった一方、サービス業のうち、宿泊業の倒産件数は100件を超え前年比7割以上と激増しました。また飲食店の倒産は800件近くに上り過去最多を更新しました。
倒産の主たる要因のうち、販売不振や輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振という内容は不況型倒産に分類されます。この不況型倒産は2020年の合計で6000件を超え、その構成比は倒産全体の約8割を占め、依然として高い割合が継続する見込みです。
2020年後半からは業歴の長い企業の倒産事例が多くみられることから、取引歴が長いから安心、といった思い込みで安易な経営判断を行うことは大きなリスクをもたらす環境下に置かれているといえます。新規取引や取引増、あるいは投資先を選ぶときのリスク管理の重要性が大きく増大しているのです。
3.老舗企業に目立ちつつある不況型倒産
2021年1月、映画の舞台にもなった1700年代に創業した老舗飲食店が不況型倒産により200年以上の長い歴史に幕を閉じました。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、観光や飲食といった主にサービス業の分野で長い業歴を持つ企業が次々に姿を消しつつあります。中には創業から数百年という長い歴史を持つ老舗企業も多く含まれています。
老舗企業は、長年の事業経験に加えて、取引先や金融機関との堅固な関係を持ち、不測の事態への対応力を一定程度備えていることが多いです。その一方、歴史に裏打ちされた過去の成功体験に囚われ、外部環境の変化への柔軟性を欠く企業も少なくないといわれます。
コロナ禍のように社会全体の行動様式が変容して、大きな業態転換を迫られる企業が多く存在する中で、老舗企業は転換への対応力に課題があるケースが見られます。代表者が高齢化している場合は、急速な環境変化について行けず、業績が悪化の一途をたどる老舗企業も急激に増加する傾向にあります。業歴の長い企業の不況型倒産が増える傾向にあることから、どれだけ長く継続取引を行ってきた企業であったとしも、経営実態をタイムリーかつ正確にとらえることがとても重要な課題と言えます。
4.急速に高まる調査専門会社を活用した企業与信調査の必要性
老舗企業の不況型倒産が増加する傾向にみられるように、これまで経営上問題がみられなかった企業の経営状況が一変し、不況型倒産の危機に陥ってケースが目立ってきています。他方、老舗とは逆に業歴の浅いベンチャー企業は、概して財務基盤がぜい弱で、コロナ禍の変化に対応できず倒産に追い込まれる企業事例が増えつつあります。
ある調査では、新型コロナウイルス感染拡大による企業活動への影響として、約4割の企業が「サプライチェーンに支障が発生した」と答えています。工業製品から衣類や食品に至るまでのさまざまな製品の製造をアジア圏に依存する日本企業にとって、サプライチェーンの寸断が及ぼす影響は、今後さらに深刻なものになることが予想されています。比較的安全と思われる業界でも、グローバルサプライチェーンの役割を持つ企業や顧客が海外取引を主要にしている企業、さらに間接的に海外取引がある企業など、コロナ禍において、海外展開を行う企業の経営リスクが確実に高まっています。
増収増益で倒産件数も低水準で推移している業界でも、コロナ融資の元本返済の負担増により財務キャッシュフローが悪化している企業がここ数か月で増加傾向にあったり、コロナ禍における公的支援策のリバウンドともとれる悪影響が徐々に表れつつあります。
逆にコロナで落ち込みが大きいといわれる観光業や飲食業といった業界でも増収増益で健全な企業も多数存在しています。このように業界に関わらずコロナの影響は表向きだけではわからないことも多く、与信調査を行う必要性が急速に高まっています。
㈱TMRでは、業界の市況動向、経営手腕、資金繰り(キャッシュフローのバランス)と資金調達力、仕入・販売先の変動、回収の長期化および不良債権発生状況、対銀行信用、役員・株主の異動状況など、詳細な危機管理分析の視点から法人調査を行うことが可能です。決算書などオフィシャルな情報だけではわからない、内紛、労使の対立、離職率が高いなどの定性情報に伴った判断も大切です。このような不況型倒産の事例が増加するような現在においても、有効な戦略を立てることが可能となります。
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