お役立ち情報
- 危機的な経済環境下における与信管理の意義
(1)新型コロナウイルス感染症拡大の影響により増大する与信管理の必要性
(2)与信管理の意義と目的
(3)持つべき視点や具体的な方法 - 危機的な経済環境下における与信管理の課題と解決策
(1)与信管理に見られる課題
(2)効果的な与信管理を行うポイント
1.危機的な経済環境下における与信管理の意義
(1)新型コロナウイルス感染症拡大の影響により増大する与信管理の重要性
新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きく広がっています。観光業や飲食業といったサービス業にみられる自粛による売上減少の影響、建設業界にみられる余剰人員という課題、自動車や住宅設備機器などの業界にみられるサプライチェーンへの影響など、各業界により特性は違えど、ダメージを受けています。
例えば、ある地方中堅建設業では、中国で生産されているボイラー関係の部品の供給がストップしてしまい、複数の現場で納期が間に合わない状況となり、受注を制限せざるを得ず、結果として余剰人員が発生し、経営を大きく圧迫しています。
またある地方都市に位置する観光業では、新型コロナウイルスによるイベント等の中止の影響により、宿泊やツアーのキャンセルが多発し、業績悪化が予想されています。このような危機的な経済状況下で大きなリスクとして考えられるのが、取引先の倒産によって代金が未回収となることです。そのリスクを最小限に抑えるための手法のひとつが与信管理と考えられます。与信管理を適切に行うことにより、的確に販売機会を捉えることと確実な売掛金回収という目的を同時的に達成することにつながります。
(2)与信管理の意義と目的
与信という言葉の意義は取引先に信用を供与することにあたります。現金での取引であれば、商品の納品やサービス提供と同時に現金を受け取るため、売上が未回収になる危険性は存在しません。
一方、企業間の取引活動で現金取引が行われるケースは少なく、商品の納品やサービス提供を行った後、一定期間後に決済されます。販売活動から現実に決済が行われる時点までの期間に発生するリスクを管理することが与信管理となります。
与信管理の目的は、取引先の貸し倒れ等による不良債権の発生を最小限に抑えることです。例えば利益率20%の企業間取引で500万円の売掛債権が貸し倒れとなった場合、損失を埋めるには500万円÷20%=2,500万円の売上を確保することが命題となり、大きな営業努力が必要となります。不良債権が発生しないようにすることは企業活動にとって必要不可欠となります。
しかし、売掛金の回収が遅れることを懸念し過ぎて、信用度がある取引先に絞ってしまうと、当然、販売機会ロスが発生しまうので、それでは元も子もありません。信用度やリスク許容度を見積もり、現実的な取引先に対する限度額を調整し、不良債権による損失を抑えるための手法が与信管理です。
(3)持つべき視点や具体的な方法
前回「倒産リスクのシグナルを読み取る必要性とポイント」で紹介した通り、取引先を定量的に評価する基準として、資本の安全性と資金の安全性が挙げられます。与信管理を行う際は主に「資金の安全性」を重視して実施されるケースが多いです。
与信管理の方法は取引先の信用力調査と取引条件の検討が挙げられます。取引先の信用力の調査は多角的な視点から実施する必要があります。主な情報リソースとしては営業担当者からの情報、取引先からの情報、外部機関からの情報に分類されます。
内容は、取引先や経営者の印象、同業他社からの情報、地域での評判といった定性的な情報から決算内容、取引履歴、取り扱い商材、販売チャネルなどが挙げられます。
外部機関からは、信用調査会社の調査レポート、不動産の登記情報などです。調査レポートは点数化されていることが多く、調査会社のコメントが入っていることもあります。また、費用はかかりますが、新規調査を依頼することも可能です。取引条件の検討では与信限度額、回収条件、担保・保証金の有無などが挙げられます。
2.危機的な経済環境下における与信管理の課題と解決策
(1)与信管理に見られる課題
①関与する申請者や決裁者の主観的な判断に陥りやすい
経験やノウハウを持っている審査部門等がない場合、与信限度額が与信申請者や決裁者の主観的な判断に依存してしまうことがあります。
②経済環境の変化への対応が遅れがちになる
取引先情報は営業担当者からしか取得できないことが多く、今回の新型コロナウイルスの影響なども含め、環境的な要因での経営状況に変化があった場合、営業担当者が情報を入手できるとは限らず、変化を見逃す可能性があります
(2)効果的な与信管理を行うポイント
①与信のルール作りと定期的な見直し
現在の新型コロナウイルス感染症の拡大の影響による倒産などで、大きな売上債権の焦げ付きも多発しており、連鎖倒産という最悪の事態も増加しています。そういった意味でも与信のルール作りが大切であり、防止策を講じることが求められています。
②危機的な経済環境下に求められる外部専門企業の活用
これまで述べてきた通り、このような危機的な経済環境下においては、与信調査を行うための自社内での体制づくりを強化することが必要不可欠です。それに加えて、企業内の与信管理・審査部門をしっかりサポートし、企業の成長を確かなものにする専門調査会社の活用が非常に有効に作用し、取引のリスクヘッジを図るために最良な方法のひとつです。
弊社(株式会社TMR)で実施している与信調査は、定性分析、経営コンサルテーションまで含んだトータルソリューションとしてお役に立つサービスを提供しています。単なる定量的・形式的な調査データの提供にとどまらず、オフィシャルな情報だけではわからない、社内での対立や離職率の高さなどの定性的・実質的な内容に踏み込んだ情報提供も行っています。取引先企業が持つ意思決定の傾向や経営上の泣きどころといった情報を事前に把握しておくことで、今般のような経済環境の激変する環境下にあっても、迅速かつ適切な与信判断が可能となります。
最新のお役立ち情報
2024年11月18日
2024年10月21日
2024年9月24日
2024年8月22日
2024年7月26日