資金調達における反社会的勢力の規制への対応について

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リスクマネジメント反社

1.資金調達における反社会的勢力への規制強化
(1)反社会的勢力による第三者割当増資に関する規制の厳格化
(2)「特定団体等」としての反社会的勢力の定義付け
2.証券取引の適正化を担う証券取引等監視委員会とは
3.反社会的勢力による第三者割当増資の虚偽記載が指摘された事例
4.証券取引等監視委員会からの審査に備えるための調査専門会社の活用

1.資金調達における反社会的勢力への規制強化

(1)反社会的勢力による第三者割当増資に関する規制の厳格化

反社会的勢力は、組織の実態を隠ぺいして、証券取引を通じた資金獲得の動きは顕著に巧妙になってきています。このような背景から、上場企業が行う第三者割当などの金融取引への規制が厳格化されつつあります。既に上場企業の第三者割当増資について開示規制が強化されています。

2009年 12 月施行の内閣府令で、第三者割当により株式の募集等を行う場合、有価証券届出書への募集先企業の内容についての記載が義務化されることとなりました。有価証券届出書上に、これまで実在しなかった特記事項の記載欄が新設され、上場企業が行う積極的な情報開示への取り組みが明文化、義務化されました。

2011年には中小企業4団体(日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会及び全国商店街振興組合連合会)が、各都道府県の下部組織に対し、企業指針の普及促進等、企業活動からの暴力団排除の取組を行うよう通知しました。さらに2014年、日本商工会議所は、会員からの暴力団排除条項を盛り込んだ定款例を全国の商工会議所に示すなど、警察と連携を図りながら暴力団排除を推進しています。中小企業が行う取引や資金調達などの事業活動においても反社会的勢力との関係を避けることが強く求められています。

 

(2)「特定団体等」としての反社会的勢力の定義付け

また、2009年 12 月施行の内閣府令では、割当を予定する企業の実態について、「暴力若しくは威力を用い、又は詐欺その他の犯罪行為を行うことにより経済的利益を享受しようとする個人、法人その他の団体」が「特定団体等」と明確に定義されました。

第三者割当増資の割当予定先が「特定団体等」に該当するかどうか、何らかの関係を有していないかどうかについて株式を発行する企業側が確認して、結果や確認方法を具体的に記載することが義務付けられています。確認すべき内容として、割当を予定する企業だけでなく、その親会社や子会社、出資者や役員等についても確認する必要があると詳細な確認の範囲が規定されました。

 

2.証券取引の適正化を担う証券取引等監視委員会とは

証券取引等監視委員会は証券取引や金融先物取引等の公正を確保する目的で財務省に設置され、現在は金融庁に属する審議会の一つです。内閣総理大臣及び金融庁長官から委任された権限により、市場分析審査や証券のモニタリング、取引調査、開示検査などを行います。

金融商品取引法または犯罪収益移転防止法に基づき、質問、検査、領置といった任意調査をするほか、裁判官の発する許可状による臨時検査、捜索及び差押え等の強制調査を行います。証券取引等監視委員会が行う開示検査によって開示規制違反等の問題が判明した企業では、経営陣のコンプライアンス意識の欠如や内部管理体制の機能不全などが原因で不適正な会計処理につながった事例が多く見受けられます。

 

3.反社会的勢力による第三者割当増資の虚偽記載が指摘された事例

A社は、有価証券届出書の割当予定先の実態調査を専門調査会社に依頼しましたが、調査報告で割当を予定している企業の親会社に反社会的勢力や違法行為に関与の懸念がある人物との関係が指摘されていました。

しかし、有価証券届出書に「割当予定先の主要株主が反社会的勢力等や違法行為に関わりを示す情報に該当はありませんでした。」と記載し提出したところ、証券取引等監査委員会からの開示検査により、増資の引受先として適格な相手方ではないことを示す情報を得ていたにもかかわらず、虚偽記載を行っていると指摘されました。

この企業は、経営上、多額の損失計上により債務超過に陥ったため、急速な資金調達と調達資金を原資とした新規事業による収益力強化を目指していたようです。代表取締役をはじめとする旧来の経営陣が持つ資金調達のノウハウが非常に乏しかったことに加え、管理体制が十分に機能しておらず、社内体制も脆弱だったことも要因のひとつと考えられます。

 

4.証券取引等監視委員会からの審査に備えるための専門調査会社の活用

経営者の視点からは、自社のガバナンスが形式だけでなく実質的な効果を伴ったものとなっているか、適正な情報開示を行うための体制が実効的に機能しているかなどについて、改めて点検することが求められています。監査役や監査委員の視点からは、独立した立場から取締役等の業務の執行をチェックするという本来の役割を果たすことが、開示規制違反等の企業不祥事の防止につながると考えられます。

第三者割当増資に伴う企業取引では、社内の管理体制や管理機能を補うためには、専門調査機関を活用した調査が有効です。証券取引等監視委員会からの検査対応におけるリスクヘッジのためにも専門調査機関の活用は非常に効果的な選択肢です。

㈱TMRではこうした証券取引等監視委員会からの検査の実績を豊富に保有しています。第三者割当増資にあたっての当該法人および大株主や役員の反社チェックを含む企業調査は、決算書分析等の定量データの分析にとどまらず、定性分析、経営コンサルテーションまで含んだトータルソリューションとしてご提供しています。安心・安全な取引の実現可能性を高めて、企業経営の成長を確かなものにします。