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厚生労働省の指針では、身元調査といった採用調査は推奨されていません。このことを理由に、採用調査を違法と考える方もいらっしゃいますが、それは誤りです。ただし、自社で行う採用調査にはリスクやデメリットも少なくありません。採用調査の違法性と、自社調査によるリスクについて解説します。
法的には採用調査は犯罪に当たらない
企業(使用者)には、そもそも「採用の自由」が認められています。どのような人を雇うかは企業の自由であり、そこに縛りはありません。より具体的な内容としては、以下の自由があります。
- 雇入人数決定の自由
- 募集方法の自由
- 選択の自由
- 契約締結の自由
どのような者を、どのような条件で雇うかは企業が持つ権利です。さらに言えば、「募集はしたけれども採用をやめる」といった行動も、企業の自由になるわけです。
上記のベースは「経済活動の自由」にあります。雇用とは経済活動の一環における“契約”。そのため、契約に必要な情報を収集し、採用を検討するための調査も違法にはあたりません。
これは昭和48年の「三菱樹脂事件 最大判」でもモデル判例があり、公的に認められています。
厚生労働省による公正な採用選考のための配慮事項
一方で、厚生労働省は公正な採用選考のために、以下の点を考慮してほしいと事業者に訴えかけています。
- 身元調査の実施
- 本籍、出身地、家族、住宅情報、生活環境、家庭環境
- 宗教、支持政党、人生観、生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合、学生運動、購買新聞、雑誌、愛読書
このように見ると、身元調査の実施は推奨されないというイメージにつながるでしょう。しかし、大切なのは調査の目的と中身です。
同省発行のパンフレットのなかでは、「応募者の基本的人権の尊重」と「適正・能力による採用選考」を基本軸とした採用選考を求めています。同時に、「採用の自由は、応募者の基本的人権を侵すものではない」とも明記しています。
「身元調査」で懸念されるのは、まさにこの人権侵害であり、個人の適正・能力とは関係ない情報が就職差別につながる可能性を示唆するものです。また、違法性のある調査が行われる可能性もないとは言い切れないでしょう。
一方、履歴・経歴詐称や反社との関係性は、本人の信用に関わる重要事項です。そのほかにも、適正・能力の判断のための身元調査は必要なことであり、差別につながるものではありません。
このように、大切なのは合法な手法で、かつ適正な目的のうえで採用調査を行うことです。
前職調査のハードルは近年高くなってきている
採用調査と聞いて思い浮かべる施策に、前職調査があります。これは履歴・経歴詐称を調べる意味に加え、応募者の適正・能力を知るのに有効な手段です。
しかし、近年は個人情報保護の観点から、情報提供を断る企業がほとんど。在席確認履歴程度であれば可能ですが、離職票などを使えばそれは明らかになりますし、わざわざ調査をするほどではないでしょう。
このように、自社で採用調査とし前職調査を行うことは手間に比べて有用性・信用性が低く、決して優れた方法とは言えません。
まとめ
採用調査は違法ではないにせよ、自社で行うにはコストも手間もかかりすぎます。また、誤って違法調査を行ってしまうリスクを考えれば手を出さないのが無難でしょう。 とは言え、採用調査が必要なケースは多々あります。こうした際には、専門会社へ調査をアウトソースすることがおすすめです。確かなノウハウを基に、信頼性の高い情報が提供されるため、採用におけるリスクの軽減と、企業価値向上に寄与するでしょう。
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